○矢巾町認知症とともに生きるまちづくり条例
令和5年2月16日
条例第1号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 町の責務並びに認知症の人等及び町民等の役割(第4条―第9条)
第3章 基本的施策(第10条―第12条)
第4章 雑則(第13条)
附則
認知症は特別なものではなく、病気と環境などによって認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる誰にでも起こりうる状態であり、自分自身や家族、身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっています。また、認知症になったとしても、生活上の支障はあるものの、その日から何もわからなくなるものでも、別の人に変わるものでもなく、認知症は私たちの長い人生の一部とも言えます。
こうしたことを踏まえて本町では、一人ひとりが日頃から認知症と向き合い、当事者として理解を深めることで、自分自身や家族、身近な人が認知症になったとしても住み慣れたところで希望を持ち、人生の最期まで心豊かに、安心して暮らし続けることができるまちの実現を目指し、令和4年11月に「認知症の人にやさしいまちづくり やはば」を宣言しました。
人生100年時代を迎え、社会情勢と併せて認知症を取り巻く環境も日々変化するなか、この宣言に込めた理念をさらに発展させ、認知症の人の尊厳を保持するとともに、単に支えられる立場と考えるのではなく、まち全体で認知症を我が事として捉えた取組を展開することで、町民誰もが慣れ親しんだまちでの暮らしが、さらに希望のある豊かなものになります。
認知症の人もそうでない人も、よりよく生きていくことができるようお互いに理解して支え合い、一人ひとりが自分らしく暮らし続けることのできる「認知症とともに生きるまち」を実現するため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、認知症とともに生きるまちづくりの基本理念を定め、町の責務並びに町民、事業者、地域組織、関係機関及び認知症の人等の役割を明らかにするとともに、認知症施策の基本的事項を定めることにより、認知症施策を総合的かつ計画的に推進し、もって認知症があっても希望を持ち、心豊かに安心して暮らし続けることができる認知症とともに生きるまちを実現することを目的とする。
(1) 認知症 介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2第1項に定めるところによる。
(2) 認知症の予防 認知症になるのを遅らせること又は認知症になっても進行を緩やかにすることをいう。
(3) 認知症の人等 認知症の人及びその家族をいう。
(4) 町民 町内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。
(5) 事業者 町内において事業を行う者又は団体をいう。
(6) 地域組織 矢巾町コミュニティ条例(昭和55年矢巾町条例第19号)第3条第1項に規定するコミュニティ組織、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他一定の区域に居住する者等により構成される団体をいう。
(7) 関係機関 医療又は介護を提供する事業所その他認知症の人等を支援する機関(事業者及び地域組織を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 町並びに町民、事業者、地域組織及び関係機関(以下「各主体」という。)は、次に掲げる基本理念に基づき、認知症とともに生きるまちづくりに取り組むものとする。
(1) 認知症の人等の意思が尊重され、尊厳を保持し、認知症があっても誰もが人生の最期まで希望を持ち、安心して暮らし続けることができる認知症バリアフリーのまちを目指すこと。
(2) 認知症の人等がその意思により、有する力を活かしながら、安心して安全に社会参加ができるまちを目指すこと。
(3) 各主体が認知症に関する正しい知識及び理解を深め、それぞれの役割を認識し、相互に連携し協働で、認知症とともに生きるまちづくりを進めること。
第2章 町の責務並びに認知症の人等及び町民等の役割
(町の責務)
第4条 町は、前条の基本理念にのっとり、この条例の目的を実現するため、認知症に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 町は、認知症に関する施策の推進にあたっては、認知症の人等の視点及び意思を尊重するとともに、各主体と連携して取り組むものとする。
(認知症の人等の役割)
第5条 認知症の人等は、安心して暮らし続けることができるまちづくりのため、自らの希望、思い及び気づいたこと等を町又は関係機関等に発信するものとする。
2 認知症の人等は、社会の一員として、自らの意思に基づき社会参加を行うものとする。
(町民の役割)
第6条 町民は、誰もが認知症になりうるものと認識し、認知症に関する正しい知識を持ち、認知症とともに生きることへの理解を深めるよう努めるものとする。
2 町民は、認知症とともに生きるまちづくりを進めるため、交流、見守りその他町民相互の支え合いに取り組むよう努めるものとする。
3 町民は、認知症の予防及び備えに努めるとともに、町、事業者、地域組織及び関係機関が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は、認知症に関する理解を深めるとともに、従業員等に対し必要な教育を行い、認知症の人の状態に応じて適切な対応を行うよう努めるものとする。
2 事業者は、認知症の人等が働きやすい環境で就労が継続できるよう努めるとともに、認知症の人等の状態に応じた新たな就業機会の創出に努めるものとする。
3 事業者は、町、地域組織及び関係機関が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。
(地域組織の役割)
第8条 地域組織は、認知症に関する理解を深め、認知症の人等の見守りその他の支援を行うとともに、認知症の予防に関する活動、認知症の人等及び地域住民が交流を図ることができる居場所づくりに取り組むよう努めるものとする。
2 地域組織は、町、事業者及び関係機関が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。
(関係機関の役割)
第9条 関係機関は、認知症に関する専門的な知識及び技能の向上に努め、認知症の人等に良質かつ適切なサービスが提供されるよう努めるものとする。
2 関係機関は、認知症の人等に対する相談体制を整えるよう努めるとともに、各主体と相互に連携して適切な支援を切れ目なく行うよう努めるものとする。
3 関係機関は、町、事業者及び地域組織が実施する認知症施策及び取組に積極的に協力するよう努めるものとする。
第3章 基本的施策
(認知症施策の基本的事項)
第10条 町は、第3条の基本理念にのっとり、この条例の目的を実現するため、次に掲げる認知症施策を実施する。
(1) 認知症に関する正しい知識の普及啓発及び学習機会確保
(2) 町民の認知症の発症及び症状進行の予防に資する施策
(3) 認知症の人等への相談支援
(4) 認知症の人等の発信、外出及び社会参加支援
(5) 成年後見制度等の権利擁護の取組の推進
(6) 地域共生社会の実現に向けた地域づくり
(7) その他町長が必要があると認める施策
2 前項の施策は、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の8及び介護保険法第117条の規定による計画において定める認知症施策に関する事項と調和が保たれたものとする。
(財政上の措置)
第11条 町は、前条第1項の施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(非常時の対応)
第12条 町は、災害等の発生時における認知症の人等の安全確保に資するため、各主体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。
第4章 雑則
(委任)
第13条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附則
この条例は、令和5年4月1日から施行する。